バッグをつくると決めたとき、私たちは最初から「完璧な答え」を持っていたわけではありません。
頭の中には“こんなバッグがあれば便利だろう”というイメージはあっても、実際にカタチにしてみると、理想と現実のギャップに何度もぶつかりました。
ここでは、その試行錯誤の中で気づいた「本当に使いやすいバッグの条件」を、開発者の視点からご紹介したいと思います。
条件①:切り替えがスムーズであること
最初に直面したのが「キャリーからリュックへの切り替え」です。
市販の2WAYバッグを使ったとき、切り替えに1分以上かかることがありました。旅の途中でいちいち立ち止まってリュックの部分を取り付けて、カバーをかける…。これでは“便利”どころか逆にストレスです。
実際に、私自身、ほとんどリュックで使用しなくなっていました。
だから私たちは、数秒で切り替えられる操作性に徹底的にこだわりました。
その結果、ボタンでもなく、一回一回ショルダー部分を外すのでもなく、磁石でパチっと、ショルダーもすぐに出せる構造を採用しました。
条件②:機内持ち込みできるサイズ感
試作品を作ってみて初めてわかったのは、「ほんの数センチの差」が大きな違いを生むということです。
初期モデルはデザインも容量も理想的でしたが、合計で5cmオーバー。結果、機内持ち込みサイズをクリアできず、使い勝手が一気に落ちました。
旅や出張の現場で一番避けたいのは、「空港で追加料金を払う」こと。
そこで私たちは、機内持ち込みギリギリを攻めながらも、規定内に収まるサイズ設計を1cm単位で徹底しました。
条件③:重さと耐久性のバランス
軽いバッグは確かに扱いやすい。けれど軽さだけを求めると、素材がチープになり、耐久性が犠牲になります。
逆に頑丈さを重視しすぎると、今度は持つだけで疲れてしまう。
このバランスを見つけるのに、かなり悩みました。
最終的に3.5kgという、ギリギリ許容できる重さを採用しました。
その上で、強度も十分なレベルを担保し、日常使いでも長く付き合える安心感を実現しました。
条件④:ポケットと収納の配置
バッグを開けた瞬間に、中身がぐちゃぐちゃ…これも大きなストレスです。
特に出張ではPCや資料、充電器、衣類などジャンルの異なる荷物を持ち歩くため、収納の配置が使いやすさを左右します。
また、旅行の時には汚れたものや濡れたものが出がちなので、そうしたものを入れれるスペースがあると便利です。
こうした検討を繰り返し、結果、大きく3つのエリアを採用し、その中には3つの防水エリア、複数のポケットを組み込むことで、整理整頓をしやすい構造としました。
加えて、2wayバッグはTSAロックをつけたのですが、内側+真ん中のエリアにロックをかけられるようにし、一番外側のエリアはすぐにものを取り出せるように配慮をしました。
条件⑤:拡張性と圧縮性を両立していること
旅や出張ではお土産や出張先で資料をいただいたりと、「荷物は必ず増える」。だからこそ収納力は欠かせません。
ただ容量を増やすだけでなく、普段はコンパクトに持てることが重要です。
さらに私たちは「圧縮収納」にも挑戦しました。
衣類をまとめてジッパーで圧縮すれば、同じ容量でも2倍近く入る。
さらに、中心のエリアにジッパー式の物理的な拡張機能をつけることで、最大60Lまで収納可能としました。
“圧縮できるのに、拡張もできる”という相反する条件を叶えることで、どんな状況でも安心できるバッグが完成したのです。
条件⑥:キャスターもスムーズであること
キャリーケースでキャスターが微妙だったらストレスが溜まります。
特に、60Lまで大容量になると、キャスターの違いが大きく出てきます。
キャスターは凸凹道でもしっかり走るように、高さをある程度出すことで安定感を持たせると共に、タイヤと本体の間に隙間を作ることで、小石などが挟まりずらい構造としました。
また、長く使っていただくために、キャスター位置を少し内側に入れることで、耐衝撃性を上げる形を採用しました。
キャスター一つとっても多くの観点がありましたが、良いものになったと感じています。
まとめ:試作を繰り返して見えてきたこと
何度も試作を重ねた結果、私たちがたどり着いた結論はシンプルです。
「使いやすいバッグとは、持つ人が迷わず自由に動けるバッグ」であること。
切り替えの速さ、サイズ感、収納配置、拡張性と圧縮性、そしてキャスター。
それらをすべて兼ね備えたとき、初めて「本当に使いやすい」と胸を張れるバッグが生まれるのだと思います。
ぜひみなさまにも、「荷物に縛られず、もっと自由に旅や出張を楽しんでほしい」と思います。